かまぼこ協会の緊急声明が示す重油危機の深刻さ

こんにちは、中西です。

 

前回は、5月末に発表された農業関係の4月の統計データから、さまざまな指標で農業が危機的状況に陥っている話をしました。

 

特に、重油などを含む「光熱動力」という項目の価格も爆上がりしていたわけです。

 

これにより、農業においては重油を使うボイラー関係のビニールハウスなどが運営危機に陥ります。

 

また、病院や介護施設でも重油を使って入浴や冷暖房などを行っているようなので、医療関係の業界にも危機が近づいています。

 

クリーニング屋さんや銭湯でも重油が使われているそうですが、食べ物で言うと、特に漁業の漁船で重油が使われています。

 

その値段が爆上がりしているだけではありません。

 

現在、中東からの輸入が途絶えたことで重油が激減していますし、

 

政府がいかにも安心材料のように発表しているアメリカ産の油にしても、非常に軽い軽質油なので、アメリカ産の原油から重油を確保するのは難しいわけです。

 

そんな中、重油不足を象徴する緊急声明が、ある業界から出されました。

 

こちらです。

 
 

▼中東情勢でねり供給危機/日かま協が緊急声明 / みなと新聞 電子版
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/e-minato/articles/162623

 
 

こちらの緊急声明は、6月1日に日本かまぼこ協会が発表したもので、深刻な危機を政府に訴えています。

 

記事から一部引用しますと、

 
 

『日本かまぼこ協会(東京都千代田区、阿部賀寿男会長)は1日、全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会(同)と連名で緊急声明を発表した。

 

中東紛争を背景に、ねり製品の供給環境が極めて深刻な状況にあると指摘し、

 

政府などに対して、ねり製品の安定供給維持に向けた行政による総合的支援、

 

原材料や包材価格急騰を踏まえた食品の適正な価格改定に対する社会的理解の醸成と、円滑に価格転嫁できる取引環境整備などを強く要請する・・・』

 
 

・・・ということで、かまぼこなどのいわゆる「ねりもの」(ねり製品)の供給が

 

「極めて深刻な状況」

 

とまで伝え、「行政による総合支援」を求めている状況です。

 
 

なぜこのような状況になっているかについて、資源エネルギー庁アドバイザーの境野春彦氏は、以下のようにX上で見解を述べておられました。

 

——————————————-

 

インド、東南アジア諸国で漁船用燃料の不足が発生し、漁業活動そのものが停滞している事態になっているのです。

 

加えて、

 

・世界的なすり身供給の先行きに対する不透明感

 

・包装資材の供給不安と価格高騰の同時進行

 

「これまでに例のない複合的危機であり、状況が改善されなければ、製品出荷に重大な支障を及ぼす可能性がある」

 

——————————————-

 
 

ということで、特に「漁船用燃料の不足が発生し、漁業活動そのものが停滞している」という点を筆頭に挙げておられます。

 

これはまさに、前回お伝えした「A重油の価格高騰による漁業の危機」そのものです。

 
 

当然、かまぼこなどの練り物系だけではありません。

 

漁業全般で漁船に使うA重油が爆上がりしているため(4月農業物価指数より)、

 

漁業関係の商品(海鮮系や寿司など)は軒並み大幅な価格高騰になるのは必至です。

 

しかも、大幅な価格高騰ならまだマシです。

 

その後はA重油そのものが手に入らなくなってきますので、国内の漁業自体が壊滅的な打撃を受ける可能性も高いというより、このままいくと必然的にそうならざるを得ません。

 
 

繰り返しますが、政府がまるで安心できる代替調達先かのごとく発表しているアメリカ産の原油など、軽質すぎて重油ができる量は中東産の原油とは比較にならないほど少ないのです。

 

そもそも日本の石油精製は中東産の中質・重質油に最適化されているため、アメリカ産の原油ではまともに精製できません。

 

ということは、重油を扱う業界は、今後ことごとく業界自体の存在が消えかねないレベルの危機に陥る可能性があるのです。

 
 

日本かまぼこ協会の緊急声明は、かまぼこ単体の危機ではありません。

 

漁業全般はもちろん、農業・食品工場・病院・介護・大型船(原油を運ぶタンカーetc)・銭湯・クリーニング屋さんなどで使われているため、

 

これら「すべての業界の緊急声明」と考えないと、この危機の深刻さを見誤ると思います。